死亡届を出すと銀行口座は凍結される?相続手続きの流れを行政書士が解説

【よくある誤解】死亡届を出すと銀行口座はすぐ凍結される?行政書士が正しく解説

「死亡届を提出すると、銀行口座がすぐに凍結されるから、その前にお金を引き出しておいた方がいい。」

このような話を、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

実際、葬儀の現場でもご遺族から「銀行口座が使えなくなる前に何かしておくべきですか?」というご質問をいただくことがあります。

しかし、「死亡届を提出すると銀行口座が自動的に凍結される」というのは正確ではありません。

市区町村へ提出した死亡届の情報が、そのまま銀行へ通知される仕組みはありません。そのため、死亡届を提出しただけで銀行口座が直ちに利用できなくなるわけではないのです。

一方で、銀行が口座名義人の死亡を把握すると、相続手続きが完了するまで預金の払戻しなどを停止する運用が一般的です。

この記事では、相続手続きをサポートする行政書士の立場から、銀行口座の取扱いについて正しく解説します。


死亡届を提出しても銀行口座が自動で凍結されるわけではありません

結論からお伝えすると、死亡届を提出しただけで銀行口座が自動的に凍結されることはありません。

よく「死亡届を役所へ提出すると、その情報が銀行へ伝わり、すぐに口座が使えなくなる」と思われていますが、そのような仕組みは存在しません。

死亡届は市区町村へ提出する届出であり、市区町村と銀行が死亡情報をリアルタイムで共有する制度はないためです。

つまり、

  • 死亡届を提出した
  • その日のうちに銀行口座が使えなくなった

ということは通常ありません。

インターネットでは「死亡届=口座凍結」と説明されている記事も見受けられますが、制度としては正確ではないため注意が必要です。

よくある誤解

❌ 死亡届を提出すると銀行口座は自動で凍結される。

⭕ 死亡届と銀行は直接つながっていません。死亡届を提出しただけで銀行口座が自動的に利用できなくなることはありません。


では、銀行口座はいつ利用できなくなるのでしょうか?

銀行口座の取引が停止されるタイミングは、銀行が口座名義人の死亡を把握した時です。

例えば、次のようなケースがあります。

  • 相続人が銀行へ死亡を届け出た
  • 相続手続きの相談で死亡が判明した
  • その他の事情により銀行が死亡を確認した

銀行が死亡の事実を把握すると、預金は相続財産として扱われるため、相続手続きが終わるまで預金の払戻しなどを停止する運用が一般的です。

これは、「銀行が意地悪をしている」わけではありません。

例えば、長男から「父の口座から全額引き出したい」と依頼があったとしても、銀行は本当に長男だけへ払戻しをしてよいのか判断できません。

もし他にも相続人がいるにもかかわらず、一人だけに預金を払い戻してしまえば、後から銀行が責任を問われる可能性があります。

そのため、相続人全員の権利を守るという観点から、相続手続きが終わるまで取引を停止する運用が一般的となっています。

ポイント

「死亡したから口座が止まる」のではなく、銀行が死亡を把握した後、相続手続きのために取引を停止するという点を理解しておきましょう。


死亡後にATMから預金を引き出しても問題ない?

「銀行へ連絡する前ならATMで預金を引き出せると聞いたけれど、本当に大丈夫なの?」

このような疑問を持つ方も少なくありません。

結論から言うと、死亡後にATMから預金を引き出したことだけで、直ちに違法になるわけではありません。

しかし、だからといって自由に預金を使ってよいという意味でもありません。

亡くなられた方の預金は相続財産です。相続人が複数いる場合には、相続人全員に関わる財産となります。

例えば、葬儀費用や火葬費用、当面必要となる支払いのために預金を利用するケースもあります。

一方で、他の相続人に知らせず自分の生活費として使用したり、多額の預金を引き出してしまったりすると、後に「使い込みではないか」とトラブルへ発展する可能性があります。

そのため、死亡後に預金を動かす場合には、使い道が明確であること、領収書などを保管しておくことが大切です。

よくある誤解

❌ 銀行へ連絡する前なら自由に預金を引き出してよい。

⭕ 銀行が死亡を把握する前でも、預金は相続財産です。後から相続人同士のトラブルになる可能性があるため、慎重な対応が必要です。


2019年に創設された「相続預金払戻制度」とは?

以前は、銀行口座が相続手続きに入ると、遺産分割協議が終わるまで預金を引き出すことが難しいケースがありました。

しかし、2019年の民法改正により、一定の条件を満たせば「相続預金払戻制度」を利用できるようになりました。

この制度は、遺産分割が終わる前でも、生活費や葬儀費用などに充てるため、一定額まで預金の払戻しを受けられる制度です。

具体的な払戻額には法律上の上限があり、金融機関ごとの手続きも異なります。

「口座が止まったら一切お金を引き出せない」というわけではありませんので、慌てる必要はありません。

よくある誤解

❌ 一度口座が止まると、預金は一円も引き出せない。

⭕ 一定の要件を満たせば、「相続預金払戻制度」を利用できる場合があります。


慌てて預金を引き出す必要はありません

インターネットでは、「死亡届を提出する前に預金を全部下ろした方がいい」という情報を見かけることがあります。

しかし、そのような情報だけを信じて慌てて行動することはおすすめできません。

死亡届を提出しただけで銀行口座が自動的に利用できなくなるわけではありませんし、死亡後の預金は相続財産として取り扱われます。

慌てて預金を引き出すことで、かえって相続人同士のトラブルにつながることもあります。

まずは現在の状況を整理し、必要な手続きを確認したうえで進めることが大切です。


まとめ

「死亡届を提出すると銀行口座がすぐ凍結される」という話は、正確ではありません。

死亡届を提出しただけで銀行へ情報が通知される仕組みはなく、銀行口座が自動的に利用できなくなることはありません。

一方で、銀行が口座名義人の死亡を把握すると、相続人全員の権利を守るため、相続手続きが完了するまで取引を停止する運用が一般的です。

また、死亡後の預金は相続財産となるため、安易に引き出したり使用したりすると、相続人間のトラブルへ発展する可能性があります。

インターネット上にはさまざまな情報がありますが、大切なのは制度を正しく理解し、ご自身の状況に応じて適切な手続きを進めることです。


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